「寂しい生活」(17)稲垣えみ子


b0296300_21120740.jpg

昨年も書きましたが、新聞社をお辞めになって、電気のない生活を実践してらっしゃる稲垣さん。
(正確には、そういう生活を極めてるうち会社も辞めてしまったというわけだけど)
ものすごく話題になって、あちこちテレビにもお出になってたけれど、
出版された書籍は、どっちかっていうと、皆が知りたがっていた内容に沿ったものではなかったように思います。
もちろん、単なる節約のためだけにやっているのではない。ってことは十分理解していたけれど、でもなんか、どこかしっくりきてないといいますか、そんな感じがしていたんです。
私だけかもしれませんが。


でも。この本。
この「寂しい生活」こそは、あの頃私たち、いや私が知りたかった稲垣さんの生活とか、心境とか経過とかを、順を追って細かくつらつらと、そしてとっても面白く、丁寧でわかりやすく(さすが新聞社で長年活躍された方ですね)書かれた本だなあと思って!
「おお~~満を持して」感たっぷりにこの本を買ってきて、読んだのです。

干し野菜のこととか、炊飯のこととか、火鉢のこととか、どこにでも書いてそうで全然書いてない本当の生の情報を知って、ものすごく驚いたり感心したり、いちいち感心して読んでいたのですが、ただ、それは前半だけの話。

最後の章には、もう、、、、、
涙がうっすら滲んでくるくらい、心に迫る話が展開されてて、、、

きっと、こういうことをちゃんと訴えたいがために、わざわざ、あの時期を外して、今の出版にしたんじゃないか、ってくらい、すごく深いことを仰ってて。。。
なんだか、今の自分にとても当てはまる気がして、感動しました。


電気だけじゃなくて、水道もガスもできるだけ使っておられない稲垣さんですが、事の始まりは原発事故なので、やはり電気。つまり家電製品から考えてみる戦後日本人の生き方についての考察、になっているんです。

女性の家事を軽減するために開発され、販売されてきた家電製品。最初は、すごく便利で有難くて家事を助け女性を助けてきたはずの家電。
それが戦後も70年以上たつと、いつのまにやら、必要でもない家電がどんどん開発されています。
わざわざ必要性を生み出してでも、わざわざ興味をそそってでも、それがあれば幸せになれると謳い、それがないと不幸になるのではという魔法をかけてどんどん家電を買わせ、気が付けば、日本中の家のすみずみにまで蔓延っている家電製品。
そこまでは自分でもわかってたんですけど、「問題があれば、何かを買えば解決する」という考え方、それは、稲垣さんのご両親だけではなく、ま・・・・・ったくもって、私自身のことだなあと思いました。心の底から思いました。
もう目からウロコ。このことを伝えたかったんですね。

稲垣さんと同世代の私ですが、
子供の頃から、お金があるとかないとか関係なく、欲しいものはほとんど買ってもらえなかった私は、「いつか大人になったら買いたいものは全部買う!」とどこかで思っていたフシがあり、それが、社会人になってから、爆発したままなのです。あれから、既に何十年もたってるのに、基本的には物欲というか「何かを買えば解決する!」という考え方は変わってないと思います。
もう既に人生の折り返し地点をとっくに過ぎ、稲垣さんのお母様じゃないけれど、何をするにもだるいししんどいし面倒だし、起きてると解決するすべもない問題に向き合わなければならないという苦痛が山ほど待っており、ほんと、それなら一日中寝てた方がマシか。って感じになってきていますが、それでも「このだるさを解決するには」と考えると、いまだに「何かを手放せばよい」とは思いつかず、つい習慣で「何かを獲得しなくては」と思ってしまいます。あと、単純に「消費は楽しい」というバカみたいな感覚も、いまだに色濃く残っています。

なんでしょうね、この感覚は。この考え方は。
世代の問題なのでしょうか。家庭の問題なのでしょうか。
私も、一念発起して、稲垣さんみたいに、えいやっとやってみれば、道は開けるのでしょうか。そんなことが今の私にできるのでしょうか。
できなければ、私も溢れかえったモノに囲まれて、その中で身動きがとれなくって、立ち上がれなくなって、そこで死んでしまうのでしょうか。・・・・・・・等々、最後とその前の章は、本当に心に刺さりました。刺さるっていうか、もう心がえぐられたような気がしました。


そういえば、
「獲得する生き方はもう終わり」みたいなこと、彼女は、何度も仰ってました。
よく覚えているし、その時はその時で心に残ったしわかった気がしていました。でも、この本を読んで、ああ私何もわかってなかったな、と思いました。
こういうことだったのですね。
ああ、どうしよう。。。これは大変。。。。
そんな呑気なこといってる場合? でもなんか、打ちのめされた感が大きくて、何かやろうという気が起こらない。はぁ~~~。まあそうですよね。成人してからの長い長い時間が、全部間違ってたような気がしてるんですから。いや。まあ。物を買うことが楽しくて、その買ってきたものが家の中に鎮座してるのを見てもなお、楽しい!嬉しい!という方は、全然大丈夫です。私のように、物を買うのはまあまだ楽しいけれど、たまに義務感で買ってる時は虚しい、そして、買った時は嬉しいけれど、それが家の中にあるのを見ると「なんで買ったのか心底わからない」と思う事がよくある。あと、何か買わないと家に帰れない!と思ったことがあるというレベルになると、やばいです。原発どうこうとかじゃなく、「買う」「所有する」という欲とか習慣のループを、断ち切った方が幸せになれるってことを知るべき! 私だっ!


[PR]
トラックバックURL : http://temuo.exblog.jp/tb/26954079
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented at 2017-07-11 20:41
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by temuo at 2017-07-13 11:33
鍵さま

わあ、本当にいつもいつも、ゴミみたいな私の読書感想文にお付き合いくださいまして、本当に有難うございます!!! ていうかすみません!
そうなんです、そうなんですよ。
さすがお目がお高い、稲垣さんは、まあいってみれば、バブル絶頂期に大変なセレブ生活を送っていたような類の人ですから、どんなに清貧生活を極めても、仰る通り、どこか道楽というか趣味というかそんな感じが滲み出ちゃうんですよね。別に嫌味、とまでは感じませんでしたが、でも私もずっと、どこか何かがひっかかってるような気がしてたんです。コスメもお洋服もバッグも、何十万もお金を使っていたような人で、一度ハンパない贅沢を極めた人だからこそできるんじゃないかな、と。ちょっと羨ましいなという気持ちもあったんだと思います。

だけど、この本を手に取ってみて、なんかちょっとその辺の思いがストンと落ちた気がしました。本当は淡々とお一人で地味にやっていきたかったんでしょうが、テレビに出たり本を書いたりすることでちょっとでも皆さんに何か考えてもらいたいってだけで、ご自分では世間の「貴族の道楽だろ」的なイケンもよくご承知なんだろうなあ、と思いました。
うまくいえないけれど、無理してみんなが同じことする必要もないと思いました、矛盾してるけど。。。こういうことを知る、考えられただけでもよかったなーーと今はゆるーーく思っています。

BUTTER、私はわりと読み流してしまったんですが、ああいうのは読む側の時期とか気分とかというタイミングによって、結構感想がかわってくるのかな、と思っていて、しばらく時間がたってから読み返してみようかなあと思っています!

有難うございました!
名前
URL
削除用パスワード
by temuo | 2017-06-27 21:35 | books | Trackback | Comments(2)

K-POP記事は、http://temuo.hatenablog.jp/ の方に移りました。


by temuo
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30